古書探訪〜ある愛読家の記録〜

本の魅力に取り憑かれた男の追憶

上林暁が好き 僕が愛してやまない私小説家

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上林暁(かんばやしあかつき)との出会いは

吉田篤弘さんのエッセイだった。

 

つむじ風食堂の夜」で有名な、

吉田篤弘の作品「神様のいる街」に

上林暁について語られている箇所がある。

 

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吉田篤弘の書く世界観に魅了されていた、

当時の僕は

 

『こんな素敵な世界を創り出す人が、買い漁り、読み漁った作者はどんなにすごい人なんだろう。。』

 

と、一遍に上林暁に興味を持った。

 

それから程なくして、

いきつけの小さな本屋さんに、

上林暁さんの選集が置かれていた。

 

あっ、見つけた。。

 

目に上林暁と言う文字が飛び込んできた時、

僕と世界は切り離され、

宇宙の中に漂っているような、

感覚に包まれた。

 

大袈裟かもしれないが、

そんな心地だった。

 

そしてしばらく僕は、

「星を撒いた街」と向き合い、

世界から隔離されていた。

 

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家に帰り早速読んだ。

 

淡々とした飾りっ気のない文章。

作品のテーマは私小説らしく、

身の回りで起こることばかり。

 

最近の作家さんが書いたような、

社会的なテーマといった大それたものはない。

なのに、惹き込まれる。

 

上林暁の書く淡白な文章が、

僕の脳内世界で変換されて、

色鮮やかな世界を創り出す。

 

すごい作家さんだと思った。

本を胸に当て両腕で抱きしめた。

僕と上林暁を引き合わせてくれた、

吉田篤弘さんに感謝した。

 

それからと言うもの、

上林暁の本を読んではしばらく離れ、

色んな作家さんの本を読み、

そうしているうちにまた上林暁

文章が恋しくなっては、

上林暁を読みを繰り返している。

 

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「ばあやん」という上林暁の第27創作集のなかに

文士 という言葉が出てきた。

 

言い得て妙だと思う。

 

飾るわけでなく、

表現技法に凝るわけでなく、

(技術が高度すぎて、技術臭さがないと言う風にも思えるが)

静謐・誠実に文の道を邁進した

上林暁の文章。

 

文学好きなら、

是非とも一度は、

読んでもらいたいと思う、

僕が大好きな作家さんです。